※要約(長いので)
LLMが発達してQAエンジニアが追いやられていることに悩んでいましたが、プロダクトの前提を考えることで何となく方向性が見えました。というお話です。
いまだに「QAエンジニアってなんだろう」を考える日々です。
というのも、今年に入って以降のLLMとバイブコーディングの隆盛が想定以上に凄いからです。3月もここまでとは思っていなかったし、5月も凄すぎてよくわかんなかったし、今は…もう全てを理解することは諦めて、「そういうものなんだな」と思うに至っています。
ここまで進歩しなければここまで悩むこともなかっただろう、と思いますが、まあそういうことになってしまったならしょうがない。かといって考えないで仕事できるほど朗らかな人間でもない。
なぜ悩むか、って、QAエンジニアとしての自分の存在意義がわからなくなる/なくなるからです。
QAエンジニアの職務には「(テスト等を用いることで)プロダクトを正しく作れるようナビゲートする」性質があります。バイブコーディングが進めば、この領域に開発エンジニアが染み出して来ることは容易に想像できます。LLMがコーディングするなら、人間の業務はドメインエキスパートとしてLLMの成果物をレビューする方向にシフトするはずです。
最初こそテスト技術についてはQAエンジニアは一日の長がありますが、テストは大概が枯れた技術ですから、「QAエンジニアいらなくない?」と言われるのもすぐでしょう。
ましてや私はQA畑ではないので、ただの劣化エンジニアです。
自分の存在価値がなくなる。
厳しい現実を突きつけられてしまったな、と思いました。
TVerで博士ちゃんの世界遺産サグラダ・ファミリアSPを観ました。
「最近テレビ面白くねえなあ」と思いながらダラダラとテレビやらサブスクしてるやつやらザッピングして、TVerで目に止まったのが芦田愛菜ちゃんがバルセロナに行った回で、そのまますっかり引き込まれて観ました。
終わりの方に、外尾悦郎氏へのインタビューがあります。日本人にしてサグラダ・ファミリアの主任彫刻家の方です。
これがまた…シビレるインタビューでした。なんかゴチャゴチャいうのも野暮です、TVerで見てください。
インタビューの中で、「サグラダ・ファミリアの"完成"についてどう思うか?」という問いに対しての外尾氏の回答に、個人的に示唆を受けたところがありました。
曰く、「"完成"ということについてもっと考えるべき。常にいいものが出るなら完成ではない。人間が作るものに完成はない。」とのことでした。端折りまくってるのでTVerで見てください。
話を聞きながら、「これSaaSプロダクトにも通ずるな」と思うわけです。我々は日々完成しないものを作っているのです。
そもそもこれまでは完成する/しないを考えることもなかったわけですが、完成することがないのは明らかです。
我々の取り扱うプロダクトは完成しない。ならそれを前提として自身の指針や行動を考えるのはどうだろう。と思ったわけです。
「完成しない」ということに立脚すると、プロダクト開発に出てくる主要なアクターの考えることはこんな感じでしょう。
- ビジネスサイド・PdM: これから先どのように良くしていくか
- 開発エンジニア(デザイナー・SRE等含む): 今どのように良くしていくか
じゃあQAエンジニアの考えるべきことは、「これから先」を「今」に正しくつなげることなんじゃないか?と思いました。
これから先こういうことをプロダクトに盛り込みたい、ならこれを明らかにしておかないといけないよね、こんなものを用意しておかないといけないよね、ということをPdMや開発エンジニアと協力して進めることが必要かな、と。
これは、シフトレフト・シフトライトをより推し進める、ということかもしれません。「今」実装するにあたって必要なテストは多分もうLLMと開発エンジニアが作りますから、そこにQAエンジニアは不要になるはずです。「これから先」必要になる対応に対して、先んじて分析して、先んじて品質・正当性を保証できる方法を用意して、「今」実装できるようにする、そんな動きだと思います。
テストエンジニア志向のQAエンジニアならテスト分析・計画・設計を先にやっておくこと、SETならテストの実行環境を含むパイプラインを整備しておくこと、あたりから始めることになるのでしょうか。どちらにせよ、開発エンジニアより先を見通していないといけないでしょうね。
プラス、より良いものにできる、ということに貪欲になる必要がありそうです。アジャイル開発の「こうなっていればアジャイル開発を体現できている」というものはなく、常に磨き続けるところに本質があるところに通ずると思います。チェックポイントとして「完成」というものがあったとしても、それは綻びの始まりかもしれない。
ということで、なんとなく目指すべき方向性が見えた?かも?というお話でした。
再三書いてますが、博士ちゃんの世界遺産サグラダ・ファミリアSP、TVerで見てください。
時間がなければ外尾悦郎氏へのインタビューだけでも。2:25あたりです。
私にはブッ刺さりまくりました。上に書いたこと以外も示唆に富む内容です。是非。